長崎県
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令和元年度卒業式 校長式辞

2020年3月1日更新

式 辞

  昨年十一月、長崎を訪問されたフランシスコ・ローマ教皇は、浦上天主堂の被爆十字架と、『焼き場に立つ少年』の写真パネルの横で、聴衆に語りかけました。
 そして日本を離れる直前、都内の大学において、若い大学生に向けて、ローマ教皇は、
「一人ひとりどんなに複雑な状況にあっても、みずからの行動に対しては、正直で責任を持つことを心がけ、どんな時でも弱者・社会的に弱い存在の人を、擁護しかばい守る人間になって下さい」
と呼びかけました。そして最後に、
「ことばと行動が、偽りと欺瞞(ぎまん)・あざむいたりだましたりすることに満ちた今の時代において、特に必要とされる誠実な人間になって下さい」と、スピーチを締めくくりました。 

 いま松浦高校を巣立っていこうとしている、卒業生のみなさん。あなたたちには、これからの未来を、これからの日本を、そしてこれからの長崎を担っていく責任があります。松浦高校の卒業生であるという立場に安住することなく、目指すべき理想の大人になろうとする努力を続けていって下さい。
 卒業生のみなさん。あなた方は久しぶりに定員が充足した学年で、入学式では、皆さんに喜んでもらいました。学年集会をコモンホールで行ったときは、「隅から隅まで、ぎっしりと埋まり、感激したなあ」と、当時の先生方は語っていました。
 しかし入学後すぐにインフルエンザが流行し、宿泊研修終了後は学級閉鎖になるという、大変なスタートとなりました。それでも野球部の試合に全校応援に出かけたり、県の音楽研究会では、学年全員合唱を披露したりした、とも聞いています。
 また地域貢献活動にも取り組んでくれました。松浦インターチェンジ開通式セレモニーでは、放送部・吹奏楽部・なぎなた部と、大いに盛り上げてくれました。ヤマメの釣り堀である青龍の郷には、美術部制作の看板が今も飾ってあります。松浦高校の代名詞とでも言うべき『まつナビ』は、立派に受け継がれ、昨年は地元中学生の前での、プレゼンテーションも実施してくれました。
 部活動では、毎年のように全国大会や九州大会に出場した商業クラブ。十年連続全国大会出場の放送部。夏の全国インターハイで全国3位という快挙を成し遂げたなぎなた部。2年連続3回目の、全国高校駅伝への出場を果たした陸上部と、たくさんの活躍をしてくれました。
 また九月の体育祭は、残念ながら雨のため、室内での開催となりましたが、3年生が誰一人として嫌な顔をせず、「室内になったのは、仕方がない・それなら室内での体育祭を精一杯盛り上げよう」とポジティブに考え、全力を尽くしてくれました。たとえ、困難な状況であってもそれを言い訳にせず、持てる力を最大限発揮しようとする姿勢に、私は心打たれました。
 厳しい寒さの中にも、春の光が天地に満ちあふれる、今日のこの佳き日。
松浦市長・友田吉泰(ともだ・よしやす)様、長崎県議会議員・石本まさひろ様をはじめ、多くのご来賓ならびに保護者の皆様のご臨席を賜り、令和元年度 長崎県立松浦高等学校第五十六回卒業式を挙行できますことは、私たち教職員にとりまして、大きな喜びであります。これもひとえに、関係の中学校の先生方、地域の皆さま、そして松浦市のお力添えのたまものと、深く感謝いたしております。
 さきほど、百十三名の卒業生のみなさんに卒業証書を手渡しました。
 卒業生のみなさん、保護者の皆さま、心よりお祝い申し上げます。高等学校の卒業は、保護者の皆さまにとりましても、特別に感慨深いものだと思います。
 本校は、松浦市からの手厚い支援と、市民の皆さまからの熱い期待を受け、地域との協働学習を推し進めているところです。そして今後も、地域の皆さまから愛される学校・魅力ある学校を目指し、努力していく所存です。

  私は、この松浦高校と、あなたたち松高の生徒たちと、自然と人の温かさにあふれる、美しい松浦が大好きです。
 上志佐から青龍の郷、柚木川内(ゆのきがわち)キャンプ場、そして雄大な龍王の滝。
 青島へ渡る、フェリーを吹き抜ける心地よい風。無数の養殖筏。
 田植えの時期の土谷の棚田は、夕日によって真っ赤に染まり、言葉では言い尽くせない美しさです。
 雄大な鷹島肥前大橋からは、海と島と空の、美しいコントラストを堪能することが出来ます。
 そしていつも、温かな目で見守り、優しく声をかけてくださる、地域の方々。 

  石垣りんという詩人の方の、『表札』という詩があります。

自分の住むところには
自分で表札を出すにかぎる。
自分の寝泊まりする場所に
他人がかけてくれる表札は
いつもろくなことはない。

病院へ入院したら
病室の名札には石垣りん様と
様が付いた。

旅館に泊まっても
部屋の外に名前は出ないが
やがて焼き場の鑵(かま)にはいると
とじた扉の上に
石垣りん殿と札が下がるだろう
そのとき私はこばめるか?

様も
殿も
付いてはいけない、 

自分が住む所には
自分の手で表札をかけるに限る。 

精神の在り場所も
ハタから表札をかけられてはならない
石垣りん
それでよい。              ……『表札など』1968年 思潮社 刊

 

 なんと潔いのでしょう。精神の在り場所も、精神の在り方も、人からレッテルを貼られてはいけない。自分にとって大切なもの・自分が目指していくもの、それらは自分で決めるしかないと、私たちに覚悟を問いかけています。
 あわせて、立場・役職・肩書きなどを抜きにした、一人の人間の本質こそが重要なのだと、訴えているように感じます。 

 いよいよ最後ですね。皆さんには、涙よりも、笑顔が似合います。そして笑顔は、人を幸せにする魔法の力と、苦労や困難を乗り越えるエネルギーを持っています。
だからいつでも、笑顔でね。 

素敵な大人に成長したあなた方に会える日を、楽しみにしています。
そんな笑顔のあなた方に、再会した時にかける言葉を、私はもう決めています。 

再会の時にかける言葉は、 
「おかえり」 

 令和二年 三月一日
   長崎県立 松浦高等学校長 中 上  徹

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