末永く佐世保東翔高等学校を 見守り 愛していただければと思います。
式辞
長崎県立佐世保東翔高等学校の創立70周年記念式典に、長崎県議会議員 文教厚生委員長の山下博史さまをはじめ、多くのご来賓の皆さまのご臨席を賜り、感謝申し上げます。また、歴代の校長先生や地域の皆さま、保護者、同窓生の皆さまといった、本校を支えてこられた多くの皆さまの温かさを感じております。
昨今は、記念式典の開催も各学校の裁量ということになっておりますが、田中文子同窓会長さまをはじめとした同窓会の皆さまのご支援もあり、記念講演と合わせて開催することといたしました。長崎県立大学理事長 坂口克彦さまの経済人としての豊富なご経験に基づいた坂口メソッドに触れることは、生徒・職員にとって貴重な経験です。
さて、早岐高校としての7年、佐世保東商業高校としての37年、佐世保東翔高校としての26年を経て、今日、70回目の創立記念日を迎えました。校名も校舎も学科も変わりましたが、一貫して県北の皆さまに支えられ、社会に貢献できる前途有意な若者を輩出することを期待されてまいりました。
佐世保東翔高校の校訓は「創造」です。続けて、「新しい感覚と柔らかい発想で 常に道を切り開き 創造性豊かな たくましい人であれ」と付されています。
現代社会は、ウェルビーイングの考え方の重視・多様化の時代、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の時代などと言われます。今の子どもたちは、答えは1つではない、正解へのアプローチも1つではない、自分が出した答えが有効かどうかもわからない時代に成長します。
第四期長崎県教育振興基本計画では、「つながりが創る豊かな教育」をテーマに、政策の4つの柱に、「一人一人に応じた最適な学びを提供する」「新しい時代に求められる魅力ある学校をつくる」「生涯にわたり誰もが学び、活躍できる地域づくりを推進する」「人生や地域に潤いと活力をもたらす、文化芸術・スポーツ活動を推進する」と掲げています。子どもたち同士の、教職員との、ご家族との、そして地域の皆さまとの「つながり」が豊かな教育の場を創るというメッセージです。
特に、今注目されているのが「ナナメのつながり」です。ナナメのつながりこそが、心に安定をもたらし成長を手助けすると考えられています。子どもたちにとって、先輩、担任以外の先生、親戚のおじさんやおばさん、地域の大人といった、直接的な影響力はなく、全面的に責任を負う立場ではないが、支援ができる存在です。生徒の皆さんには、このナナメのつながりも大切にしてほしいと思います。
詩人 谷川俊太郎さんの『生きる』という詩を紹介します。
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
谷川俊太郎さんの詩は親しみやすい言葉で紡がれていますが、鋭い感覚や新たな視点で捉えられていることがわかります。今の社会に求められているのは、この新たな視点であり、新しい価値の創造ではないかと考えます。新しい物やシステムは、突然、世の中に生まれてくるわけではありません。当たり前すぎて見落としてしまいがちな部分に、現代的な価値づけをするという、バリュークリエーターが求められています。
佐世保東翔高等学校は、今後も、総合学科の学びにより自分の強みを増やし、自己の人生と社会の未来を切り開く、社会に求められる有為な若者を輩出し続けることをお約束し、式辞といたします。
令和6年11月22日
長崎県立佐世保東翔高等学校 校 長 峰 薫