長崎県
長崎県立学校ホームページ Nagasaki Prefectural Schools

求められている学力(第19号)

2020年6月5日更新

長崎県立五島海陽高等学校

校 長   古川 賢一郎

5月11日に学校が再開されてから約1ヶ月がたちました。最近提唱されている「新しい生活様式」を踏まえた平常授業中心の生活が続いていますが、皆よく頑張っています。

さて、海陽高校では年に2回悩み調査が行われており5月21日に1回目が終了しましたが、例年設問の中で、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答する割合が多いのが、「学習する意欲が湧かず、怠けてしまう」「希望の地域・職種・職場に就職できるか不安である」「十分理解できない教科・科目がある」「客観的に見て自分は成績が悪い」の順で、進路や学力に対する悩み(コンプレックス)が目立ちます。

では、「学力」とは何でしょうか。定義づけが曖昧なまま「学力を伸ばす」「成績を上げる」と言っても、議論が混乱するだけです。このことについては、学校教育法30条2項に次のように書かれています。「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うこと」。

特定の国の特定の時期に制定された法の中で定義づけられる「学力」に普遍性はあるのか、それは単に今の世の中のニーズに合致する能力を言っているに過ぎないのではないか。という考え方もあるでしょう。その解明は教育学者に任せるとして、整理すると、これから求められる学力は3つの要素から成り立っているといえます。

(1)基礎的な知識及び技能。(2)これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力。(3)主体的に学習に取り組む態度(勤勉、真面目な学習態度とは少し異なる)

 (1)はかつてから、そして今も皆が信奉している「近代型能力」で、モノを相手にしていた時代(工業社会Society3.0)には必須の学力でした。しかし、現代(「ポスト近代」)は、情報社会(Society4.0)を超え、次の新しい時代を生き抜いて行くことが求められています。

人を相手にする知識基盤社会の中では、少子化やグローバル化に伴う外国人との関係性を築くため、日本人独特の「以心伝心」から「論理によるコミュニケーション力」が求められています。それを必要としている学力が(2)と(3)ですが、抽象的な概念のため、どのようにすればどこまで到達できるのか明確ではありません。

またそれは、(1)に比べて簡単そうで、かつ評価方法も確立していないため、「話やプレゼンがうまい」「機転が利く」力に置き換えられてしまいそうです。このことについて、社会学者の竹内洋さんは次のように、おっしゃっています。(要約)

人々はコミュニケーション(能力)を過剰に意識し、芸人の「コミュ力」や「空気読み」を「お手本」にしている。今時の大学生は、テレビに出ている芸人そっくりのしゃべり方をする。コミュ力至上(と考える)社会のなせるわざであろう。

しかしどうだろうか。われわれが目にする芸人のコミュニケーションは、バラエティなどの虚構の世界のコミュニケーションである。だから「盛る」ことも「嘘をつく」ことも芸のうちである。このようなコミュ力を、そのまま堅気の実生活には持ち込めないだろう。持ち込めば、「舌先三寸」とか「調子のよいやつ」とされ、信頼や信用を失うのは目に見えている。

翻って、コミュ力の「模範」とされる芸人の実生活(舞台裏)を考えてもみよう。舞台裏では、芸を真剣に磨いている。創造性や能動性などのポスト近代型能力はもとより、知識や勤勉、努力などの近代型能力もあだやおろそかにしていない。昔気質を思わせるほどの律義さをもって人間関係にも気をつかっているはず。そうでなければ一発屋で終わるだろう。

水面を優雅に泳ぐ白鳥は水面下では必死に水をかいているということだ。コミュ力という言葉の雰囲気に惑わされてはいけない。

 (1)と(2)(3)は決して背反するものではなく、どれも日々の授業や行事によって培われていく力です。特に(2)(3)は、定期考査のような数値で表現できにくいもの(非認知スキル)なので、(1)の成績だけで自分を過小評価してしまいがちですが、学校行事やボランティア、生徒会活動、学年集会、部活動、海陽発表会等で活躍する力も立派な学力です(むしろ、後者の方が社会に出てから必要になる場面が多いことが、大人になると感覚的にわかります)。

同時に、竹内さんの文章にもあるように、特に(2)(3)に必要な「コミュ力」を誤解せず、根底にある「旧い学力」と見なされがちな知識や技能、勤勉をおろそかにしない姿勢も忘れず、1日1日を頑張っていってほしいと思います。

 

 

 

学校の連絡先

  • 五島海陽高等学校
  • 住所:〒853-0065 五島市坂の上1-6-1
  • 電話:0959-72-1917(事務室)/72-1447(職員室)/72-7364(進路室)
  • ファクシミリ:0959-72-1990
先頭に戻る

メニュー