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無私の日本人(第13号)

2019年8月22日更新

長崎県立五島海陽高等学校

校 長   古川 賢一郎

(ボランティア精神に関する講話の続き)                                                                                                                                                                                                                                     2000年から5年余り放送され、今も多くの熱烈なファンがいるNHKドキュメンタリー「プロジェクトX」には、現在の日本の礎をつくった無名の人々が数多く登場しました。彼らには、その労苦に見合った報酬や地位、名誉などなく、またそれを望みもせず、後世に素晴らしい財産を残してくれました。そのような誇らしい日本人に皆が喝采を送った番組でしたが、このような人たちは、それ以前にも存在していました。 

表題は歴史学者の磯田道史准教授の本のタイトルで、映画「殿、利息でござる」は、その一編「穀田屋十三郎」を描いたものです。

時は明和~安永年間、仙台藩北部の吉岡という貧しい宿場町では、領民に宿場町間の物資輸送を負う「伝馬役」という任務が課せられており、食べるにも事欠くなか馬まで買わなければならず、その間は農作業もできず、民は困窮していました。                                                                                                                                                                      この状況を打開しようと、造り酒屋穀田屋の当主十三郎は、吉岡宿きっての知恵者、茶師の菅原屋篤平治の案で、町の有力者たちから金を集め、それを資金に伊達藩へ千両(約3億円)を貸し、利息(相場1割)を伝馬役の費用に充てようと考えました。複数の村を束ねる大肝煎の千坂仲内、味噌屋の穀田屋十兵衛、肝煎の遠藤幾右衛門らの賛同と出資を得て、公の場でその申し出を行った時点で打ち首になるかもしれない中、嘆願書を藩主に提出しようとしますが、役人らに却下されるなど計画は難航します。

当時、造り酒屋と質屋を営んでいた十三郎の弟浅野屋甚内は、篤平治らに金を貸し莫大な利益を上げており、冷酷な金融業者と忌み嫌われていました。ところが実は、先代甚内の時代から密かに、貯めこんだ金を領民の伝馬役軽減のため献上する準備を進めており、その意志が受け継がれていたのでした。 十三郎らからの協力依頼に対し、浅野屋は家財一切と長年の貯金を提供します。この常軌を逸した行為により、遂に十三郎らは、武士に金を貸し利息で郷里を潤すという前代未聞の大事業を、8人の同志と共に成し遂げることができたのでした。計画は藩の財政担当者から藩主伊達重村へと伝えられ、毎年藩から利息金が支払われるようになり、その後藩主の命で浅野屋も再建され、貧困に喘ぐ吉岡宿が救われたという実話です。

浅野屋父子のような、後世に名を残さず、一度きりの人生を公への奉仕に貫いた生き様には、凄みを感じます。穀田屋十三郎も、死の直前に子どもたちへ、「わしのしたことを人前で語ってはならぬ。わが家が善行を施したなどと、ゆめゆめ思うな。何事も驕らず、高ぶらず、地道に暮らせ」と遺言を残しました。単なる「自分を主張しない慎み深さ」、「豊かなボランティア精神」の一言で片付けることなどできない、人のために力を尽くし、報いを求めない日本人の姿に感動を覚えます。

本校でも多くの生徒が、ボランティア活動や校外清掃、学校行事における見えない場面でのサポート等、無私の行為を行っていますが、これまでどおりの意識を持ち続けて頑張ってほしいと願っています。

 

 

 

 

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