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平和について(第21号)

2020年8月9日更新

長崎県立五島海陽高等学校

校 長   古川 賢一郎 

東京オリンピックの関係で、8月9日が来年の祝日「山の日」の候補日として挙げられたニュースは、未だにこの日が全国民に周知されていないことを示すものでした(後に撤回されました)。長崎県以外の人々においては、8・9・11・2は拘る必要のない数字なのかもしれません。

 8月9日には、県内のどの学校でも「平和」学習が行われています。

私は長崎市で生まれ育ちましたので、この日が特別な日であることは意識していました。しかし振り返ってみると、平和について深く考えたりはしていなかったように思います。大学の入学式を終えてキャンパスを歩いていた時、地元のメディアから取材を受けました。出身地の話題になり長崎から来たと答えると、すぐに「同じ被爆県として戦争についてどう思うか」と問われました。どうも広島と長崎を結びつけた番組を制作したかったようでしたが、うまく答えることができず、長崎の人間として恥ずかしいと思ったことを覚えています。

そのことを引きずったままこの職業に就き、改めて平和について考えるようになったのですが、私の心の中に存在していた疑問の1つが、「平和の問題は核兵器だけを取りあげるべきなのだろうか」というものでした。命の大切さは皆同じです。核兵器で失われた命も通常兵器で失われた命も、事件・事故で失われた命も同じはずです。もし平和の大切さを訴えるのならば、核戦争だけでなく通常の戦争、紛争も同じように取りあげるべきではないか。全ての戦争をなくさないと、問題の解決には到達しないのではないか。

 歴史を見ると、人類は今日まで多くの戦争を行ってきました。戦争は、国際紛争を解決する最後の手段として法的に承認されてきました(戦時国際法という言葉があることより明らかです)。人が自分の身体を守る権利を自然権として与えられているように、国家が自国の国民の生命・財産を守る権利もまた自然権です。相手の攻撃に対しては、断固として防衛するのが世界の常識です。

 そのような状況の中、我々日本人は世界にどう発信すべきなのでしょうか。侵略はもちろん防衛戦争も否定することを訴えるのか。それは現実的なことなのか。様々なハイテク機器が生産され、兵器産業が発展する中、それに日本はどう向き合うのか。

平和な世の中を築くためには、戦争をなくさなければなりません。戦争をなくすためには、その火種や原因、兵器を除去しないといけません。そのために私たちは、戦争や紛争についてもっと勉強し、分析しなければいけないと思っています。

 その参考書として皆さんに紹介したいのが、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』という本です。これは、東大の歴史学の先生が中高生(神奈川県栄光学園)20人を相手に行った5日間の講義記録で、著者の加藤陽子教授が個人の書簡、報告書、日記、地図、統計等を提示し、それが意味するところを生徒たちが推論していく過程が描かれています。

 大敗した太平洋戦争の開戦判断を、現在の地点から結果で論評するのは簡単です。大切なのは、過去の記録を知識として持つのではなく、その時点に自分を置き、当時の状況から何が起きるのか、何をすべき(だった)かを推論する力です。歴史を学ぶ意味は、未来がわからない時点で蓋然性の高い推理ができる知性を身につけることですが、この本の中でも、雑多な記録(史料)を多面的に捉え、「戦争は避けられなかったのか」「なぜ平和を維持できなかったのか」を考える訓練を通して「今を正しく判断する力」が育成されるという信念のもとに、授業が展開されています。

 これまで多くの人たちの地道な努力によって、夥しい数の命を奪う道具の中から核兵器は徐々に減少しています。その歩みを止めないためにも、まずは核の怖さを体験した長崎から核兵器の廃絶を発信し実現すること。そのあとに戦争のない世界を作るための道筋を考えるべきです。

 7月15日の長崎新聞に、本県の若者でつくる「ナガサキ・ユース代表団」40名へのアンケート結果が掲載されていました。「核兵器廃絶は可能か」の問いには、「はい」が60%。「いいえ」が32%でしたが、否定の理由として、「核抑止を安全保障の中核と考えている限り、核兵器は近代化される道を辿る」「国内での核問題の関心度がまだまだ低い(興味はあるが継続が難しい)」との意見がありました。核心を突いたものだと思います。

 交戦権を持たない日本は、アメリカとの同盟によって防衛力を維持しています。核兵器をなくしていこうとする私たちが核保有国と同盟を結んでいるという皮肉、矛盾をどう捉えるのか。国と長崎との関係はいかにあるべきか。皆さんも、長崎の人間として核廃絶について意見を求められる場面があるかもしれません。普段から歴史や政治・経済に関心を持ち、この問題について深く考えておきましょう。

 

 

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